コラム 2025年8月号 高齢者の7割「物価上昇に不安」 働きたくても健康問題に壁
2025年08月1日 コラム
少子高齢化が急速に進む中、日本の高齢者は物価高騰による生活不安や、働き続けることへのニーズ、そして健康維持の難しさという複合的な課題に直面している実態が示されました。
令和6年10月1日時点の日本の総人口は1億2,380万人であり、そのうち65歳以上は3,624万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は29.3%と、過去最高を更新しました。
今後も高齢化の進行が見込まれており、政府の推計では、2070年には「2.6人に1人が65歳以上」「約4人に1人が75歳以上」という社会が到来する予想となっています。
高齢者が抱える“最大の不安”は「物価上昇」
今回の調査で、高齢者にとって、最も大きな経済面での不安は「物価の上昇」(75%)、続いて「収入や貯蓄が少ない」(47%)、「自力で生活ができなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかる」(43%)が挙がりました。
物価高騰が続くなか、年金や貯蓄だけに頼る生活に不安を抱える高齢者が多数存在している現状が浮き彫りとなっています。

なぜ高齢者は働き続けるのか?―「収入のため」が最多
高齢者の仕事をする理由として、最も多いのは「収入を得るため」(55%)という結果でした。これは「働くのは体によい」(20%)や「知識・能力を生かせる」(12%)といった、健康面や生きがいなどの理由を大きく上回る結果であり、多くの高齢者は生活防衛という側面から働いている現状が明らかとなりました。

高齢者の“就労”を阻む最大要因は「健康の壁」
就労を希望していても実現できない理由として最多だったのは、「健康上の理由」(31%)でした。
次いで「年齢制限で働くところが見つからない」(30%)、「仕事の種類(職種)で合うところが見つからない」(26%) といった声も挙がっています。
これらの結果から、高齢者においては「健康問題」が就労継続の最大の障壁になっていることが示された。

就労支援と健康維持は「セット」で考える時代へ
今回の白書では、高齢者が経済的不安のために就労を希望している一方、健康問題を理由に仕事ができていない現状が明らかとなりました。
厚生労働省が策定した「第14次労働災害防止計画」では、「理学療法士等の活用」が明記され、事業場における労働者の身体機能の維持・改善を専門職によって支援する方針が示されました。
具体的には、筋力維持や転倒予防のための運動プログラムの導入、スポーツ習慣化の推進、骨密度やロコモ度、視力などの「転倒リスクの見える化」の促進が含まれており、さらに、「職場における腰痛予防対策指針」に基づき、作業内容に応じた腰痛対策の強化も推奨されています。
政府は、就労支援と健康維持を切り離さず一体的に進める政策を打ち出しており、高齢者が健康に働き続け、社会に貢献できる仕組みの実現へ取り組みを進めるとされています。
普段の生活の中で、できる運動やウォーキングなどを行うように心がけましょう。
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