コラム 2026年4月号 身長が縮んだ?なぜ??
2026年04月1日 コラム
健康診断の検査結果、「また身長が縮んでる……」と嘆く患者さんが時々いらっしゃいます。1回の測定で低い結果が出ても「1日の生活の中で身長は変動すると言う話も聞くし、たまたまかな」と思う人も多いかと思います。しかし数年間のデータを比べると、明らかに身長が低下してきている?身長短縮は高齢者に起きるもの、というイメージがあるかもしれませんが、実は中年から始まっており、避けることはできない変化です。

今回はこの身長短縮について解説します。
Q.なぜ身長が縮む?
身長が縮むメカニズムについてはさまざまな報告がされております。
主に
① 椎間板の圧縮
② 骨密度の低下
③ 関節の変形
④ 骨格筋量の減少
が組み合わさって発生すると言われています。
早いと40代から、一般的には50代から始まると報告されており、男性より女性のほうが短縮しやすく、特に女性は60代から短縮のスピードが増していきます。
米国のある研究報告では、30歳から70歳の間に平均で男性は3cm、女性は5cm、80歳までには男性は5cm、女性は8cm身長が縮んだとの報告があります。
上記内容を詳しく説明すると…!?
① 椎間板の圧縮
椎間板は背骨と背骨の間にありますが、その中心には髄核というゼリー状の組織があり、水分を保ち、クッション性を高める働きをしています。朝と夕方では身長が1%前後変化すると言われており、立ったり座ったりすると重力で髄核が圧迫され、水分が出ていくことによるものです。夜寝ている間に水分を吸収し、朝には身長が戻っています。
その髄核ですが、加齢によって椎間板の水分量も減少し、椎間板が薄くなってしまい、身長が低下してしまいます。椎間板自体には再生能力がないため、劣化を元に戻すことはできません。(*現在iPS細胞を用いた細胞移植による再生医療が研究されているとのことです。)

② 骨密度の低下
加齢に伴い、腸からのカルシウムの吸収が低下します。また、女性ホルモンの低下により尿に出ていくカルシウムの量が増えるため、高齢になるとカルシウム不足をきたしやすくなります。さらに、年をとると日光に当たることが少なくなる方が多く、カルシウムの吸収に関わるビタミンDも不足しやすくなります。その結果、骨密度が低下してしまいます。男性も女性ほど急激ではありませんが、加齢に伴い骨粗鬆症をきたします。そうなると、軽く転んだだけでも椎体(背骨)の圧迫骨折を起こしやすくなったり、円背(猫背)が進行したりして、身長が縮む原因となってしまいます。骨粗鬆症を早期に発見するための検査や治療はとても重要です。

③ 関節の変形
変形性関節症とは、何らかの原因で関節の軟骨がすり減ったりささくれ立ってしまい、関節の痛みや可動域が制限される病気です。中高年の女性に多く、膝や股関節が有名ですが、特に身長の短縮と関係が深いのは膝関節です。椎間板と同様、膝関節の軟骨の水分量も加齢とともに減少し、弾力性も低下します。肥満も大きなリスクですが、遺伝的素因、外傷や感染が悪化させることもあります。歩くときには膝の内側のほうが外側よりも負担が大きいため、変形性膝関節症の95%以上が内側の関節の障害で、進行するとO脚を合併して身長が短縮してしまいます。
治療方法には薬物療法、運動療法、装具使用といった保存療法と、骨切り術や人工膝関節置換術といった手術療法があります。

太ももの筋肉を鍛える、正座を避ける、適正な体重を維持する、血行を良くするといった予防が大切ですが、もし膝関節に痛みを感じたら早めに整形外科を受診してください。
④ 骨格筋量の減少
大腰筋、脊柱起立筋、腹筋、ヒラメ筋といった骨格筋は姿勢の維持に重要ですが、50歳ごろから80歳までに約40%減少すると言われています8)。その結果、円背(猫背)が進行し、身長が大きく短縮します。すると重度の逆流性食道炎が起きやすくなったり、転倒・骨折のリスクが高くなってしまいます。運動療法によって円背が改善したという報告もありますので、早期から積極的かつ継続的な治療が望まれます。
また近年、スマートフォンが普及し、猫背で画面を見ながら歩いている若者をよく目にしますが、こういった日常生活での不良姿勢も将来の大きなリスクになると思われます。普段から正しい姿勢を心掛ける必要があるでしょう。
最後に
加齢による身長の短縮は誰にでも起こることですが、正しい知識を持つことにより早期から骨密度や筋量、適正体重の維持のための運動や食生活習慣の見直しにつながり、特に女性の健康寿命が延伸すると思われます。将来のQOLを上げるために、今から頑張りましょう。






