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コラム 2023年2月号 腰痛の労災認定について

2023年02月1日 コラム

厚生労働省では、労働者に発症した腰痛が業務上のものとして労災認定できるかを判断するために、「業務上腰痛の認定基準」を定めています。

当院を受診された患者さんも、労災として請求していたが、認定されなかったケースがあります。そこで、厚生労働省より、具体的例があげられていますので紹介します。

《業務上腰痛の認定基準について》

認定要件

•腰痛を以下の2種類(※1・※2)に区分し、それぞれ労災補償の対象と認定するための要件を定めている。

•労災補償の対象となる腰痛は、医師により療養の必要があると診断されたものに限る

「災害性の原因による腰痛」(※1)

負傷などによる腰痛で、次の①②の要件をどちらとも満たすもの

①腰の負担またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること

②腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症•基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること

「災害性の原因によらない腰痛」(※2)

突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるもの

「災害性の原因による腰痛」の解説

腰に受けた外傷によって生じる腰痛のほか、外傷はないが、突発的で急激な強い力が原因となって筋肉等(筋、筋膜、靭帯など)が損傷して生じた腰痛を含む。

※突発的で急激な強い力が原因の具体的例

具体例1)重量物の運搬作業中に転倒した場合や、重量物を2人で担いで運搬する最中にそのうち1人が滑って肩から荷をはずした場合のように、突然の出来事により急激な強い力が腰にかかったことにより生じた腰痛

具体例2)持ち上げる重量物が予想に反して、重かったり、逆に軽かったりする場合や、不適当な姿勢で重量物を持ち上げた場合のように、突発的で急激な強い力が腰に異常に作用したことにより生じた腰痛

なお、俗にいわれる「ぎっくり腰」(病名:急性腰痛症など)は、日常的な動作の中で生じるので、たとえ仕事中に発症したとしても、労災補償の対象とは認められません。ただし、発症時の動作や姿勢の異常性などから、腰への強い力の作用があった場合には業務上と認められることがあります。

「災害性の原因によらない腰痛」の解説

日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛をいい、その発症原因により2つ(①・②)に区分して判断されます。

①筋肉痛の疲労を原因とした腰痛

次のような業務に比較的短時間(約3カ月以上)従事したことによる筋肉等の疲労を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。

●約20kg以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰で取り扱う業務

 例)港湾荷役など

●毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務

 例)配電工(柱上作業)など

●長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務

 例)長距離トラックの運転業務など

●腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務

 例)車両系建設用機械の運転業務など

②骨の変化を原因とした腰痛

次のような重量物を取り扱う業務に相当長時間(約10年以上)にわたり継続して従事したことによる骨の変化を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。

●約30kg以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務

●約20kg以上の重量物を、労働時間の半分程度以上に及んで取り扱う業務

なお、腰痛は、加齢による骨の変化によって発症することが多いため、骨の変化を原因とした腰痛が労災補償の対象と認められるには、その変化が「通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える場合」に限られます。

また、上記①に示す業務に約10年以上従事した後に骨の変化を原因とする腰痛が生じた場合も労災補償の対象となります。

○労災補償の対象となる治療の範囲

椎間板ヘルニアなどの既往症または基礎疾患のある労働者が、仕事により、その疾病が再発したり、重症化したりした場合は、その前の状態に回復させるための治療に限り労災補償の対象となります。

『業務上腰痛の認定事例』

(事例1)    事務職員に発生した災害性の腰痛

Aさんは、会社の倉庫内の狭いスペースから約10kgの重さの荷物を無理な姿勢のまま運び出そうとし、荷物を持ち上げた瞬間に腰に激しい痛みをおぼえ、そのまま動けなくなった。その後、病院に搬送され、腰部捻挫の診断を受けた。

〈判断〉

Aさんの腰痛は、荷物が詰まって、ほとんど身動きがとれない状態の倉庫内で、腰に無理のかかる姿勢で目的の荷物を持ち上げたことによって、強い異常な力が腰の筋肉に作用し発症したと認められるため、労災認定された。

(事例2)   電気工事労働者に発生した非災害性の腰痛

Bさんは、電気工事会社の作業員として主に電柱に上って作業する業務に約3年従事した後に腰痛を発症し、医師から筋•筋膜性腰痛と診断された。Bさんの作業のうち、毎日3時間程度は、腰部を安全帯で電柱に固定した上で、両足を止め金の上に置いて行う作業であった。

〈判断〉

この作業は腰部にとって不自然で、無理のかかる姿勢を保持するものであった。Bさんの腰痛は、その作業の特性から、腰部の筋肉に継続的な負担がかかったことが原因となって発症したと認められるため、労災認定された。

※厚生労働省 労災補償関係リーフレット参照

このように、具体的例をあげられていますので、参考にされてください。

熊本市東区御領の整形外科クリニックです。お子様の成長やスポーツに関する悩み、働く世代の方々の痛みやしびれ、高齢の方々の歩行や動作の不安や障害など骨、関節、筋肉に関する問題など、ご相談ください。

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