コラム 2023年3月号 行動変容について
2023年03月1日 コラム
医師の診察で「屋外を歩いたり、プールに行って運動をしましょう。」「関節の
痛みは体重を減らせば軽減してきますよ。」など、整形外科を受診された方は
医師やスタッフから言われたことはないでしょうか?
これまで行なっていなかったことをいざ、始めて、それを続けるとなるとなかな
か上手くはいかないものです。これまでしたことのなかった行動を行うこと、継
続することを『行動変容』と言います。
●行動変容とは、人の行動が変わることを言います
人の行動はいきなり変わるものではなく、5つの段階を経て変化するとされてい
ます。1980年代から登場した考え方で元々は禁煙研究から生まれたものですが、
禁煙以外の実践にも効果がある、とされているモデルです。
自分自身が行動を変えることや、人の行動が変わることを支援することは簡単で
はありません。「自発的に」行動を変化させることを目指して「行動変容を促
す」という使われ方がされています。
行動変容ステージモデルでは、健康状態や健康意識によって無関心期、関心期、
準備期、実行期、維持期の5つのステージに分けられています。
人が行動を変えるには、以下のように
「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」
の5つのステージを通ると考えます。
![](https://otsuka-seikei.com/blog/wp-content/uploads/2023/02/s-07-001.png)
【無関心期】6ヶ月以内に行動を移す気がない状態
この状態のままでは、行動変容を促せません。行動する必要性を感じていない、
行動するメリットがない、行動したが失敗したため、心が挫けてしまっている
などの状態が挙げられます。次の関心期に移行するためには、動機付けをし、
行動を起こすメリットを本人が実感することが必要です。具体的には、行動変化
のメリットを伝える、行動を変えないリスクを伝えるなどの方法があります。
【関心期】6ヶ月以内に行動を変えようと思ってる。本人に課題意識があり、行動を変化する必要性を感じている状態
どのように動くべきかわからない、行動することでのデメリットへの懸念などの
要因で、すぐに実行する意思はありません。そのため、行動しないデメリット
と、行動することのメリットをイメージさせることが必要となります。目標とす
る先輩社員や上司などをモデルにし、イメージすると、具体的な行動変化のイメ
ージや成果が想像しやすくなります。目先の目標ではなく、長期的な目線でのメ
リットが実感できると、強いモチベーションにつながります。
【準備期】準備期の段階では、行動を実行に移したいと本人が思っている状態
1ヶ月以内に実行したいという気持ちがありますが、この段階では実践し始めて
はいません。例えば、ダイエットをするために本や運動器具を購入したなどの状
態が該当します。この段階になると、本人にモチベーションがある状態となり、
次への移行がしやすい状態です。周囲に公言するなどして、自分にプレッシャー
を与えることで、実行をスムーズにするなどの働きかけができます。
【実行期】実際に実行し始めた段階で、行動変えて6ヶ月以内の状態
実行期の初期段階はメリットが実感できず、準備期や無関心期に戻る可能性があ
ります。逆戻りしないためにもできたことを賞賛するなどして、モチベーション
が維持する工夫が大切です。また周りからサポートして続けやすい環境づくりも
効果的です。
【維持期】行動を変化させて6ヶ月以上経った状態
この段階は行動変容によるメリットが実感でき、習慣化できた状態となります。
実行期と比べると、逆戻りしにくい状態ではありますが、途中からやらなくな
り、逆戻りする可能性も0ではありません。そのため、実行期と同じく逆戻りし
ない対策が効果を発揮します。ここまで実践できると、成功体験として本人が自
信を持つことにつながり、次の行動変容時にはよりスムーズに実践しやすくなる
でしょう。
![](https://otsuka-seikei.com/blog/wp-content/uploads/2023/02/634.gif)
整形外科の診察で医師が、「筋肉が固まって関節に負担が出ています。筋肉を
柔らかく、筋力がつくようにリハビリをしていきましょう。体操なども教えて
くれるので、家でもやってみて下さいね。」と言われました。実際にリハビリを
受けて、体操も教えてくれたんですけど、家ではしてません。面倒くさいが
優先してやる気が出ないですね。
無関心期:
「なんで家に帰ってまで自分で体操しないといけないの?」と体操をすることの
意味がわからない、面倒くさい、などを理由に関心を示さない状態。
関心期:
「何回かリハビリ受けて、関節が動くようになってきたな。リハビリ中に体操を
数種類してみて、それの効果が出てきた感じがしてきたな。」と体の変化が出てきて
体操への興味が湧いてくる。
準備期:
「だんだんと関節が動いてきて、体を動きやすくなってきたから、
自分でも体操してみようかな。
病院でもらった体操のパンフレットが確かどこかにあったと思うけど、、、あった。
これは病院で教えてもらった体操だから、自分でもできそう!」と自分の体の変化により
体操への興味が湧いてきた状態。
実行期:
「だんだん筋肉が固まっていたのが柔らかくなってきて、関節の動きも滑らかになってきたな。
体操が頑張るともっと良くなりそうだから、体操して柔軟な体で力強くなりたいな。」
運動を行っての効果が見え始め、診察に行った時も医師に良くなっている、と褒めてもらい
モチベーションが上がっている状態。
継続期:
「関節も良くなってきて、ランニングを再開したらどんどん走れるようになって、また
マラソンにチャレンジして完走できました。」
通院や体操を継続したことで、以前まで行っていたマラソンを再開できて、結果も良かったので
これを成功体験として運動を継続したい状態。
行動変容を促すには、行動変容に影響するさまざまな要因をみつけるとともに、
周囲の環境を整備したり、教育面からの支援を行い動機づけを高め、行動変容に
必要な知識と技術の習得を促すような複数でかつ多面的な仕組みが必要となりま
す。
行動変容が難しい理由
人は「変わりたい」と思う気持ちを持つと同時に無意識下で「そのままでいた
い」という変化をあらがう状態をあわせもつ特徴があります。
そのため、関心を持ったとしても行動に移すまでにはまたいくつもの壁があり、
関心を持ってもすぐに行動に移せないばかりか、行動に移せた望ましい生活習慣
行動も「継続」「定着」するためにも、その行動をやめてしまう危険と隣り合わ
せとなります。
行動変容ステージは対象者の特徴を理論的に把握することができますが、単純に
右肩あがりに一直線に行動変容がすすむわけではなく、ステージを行ったり来た
りする状態を経ながら変化していきます。
人それぞれ、各段階での悩みで前に進めない状況です。
特徴に合わせた働きかけてみましょう。
厚生労働省 e-ヘルスネット 行動変容ステージモデル
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-07-001.html