関節唇損傷
肩関節は上腕骨の骨頭(球状の部分)と、肩甲骨の関節窩(かんせつか=骨頭の受け皿となる部分)で構成されますが、関節窩の面積は骨頭の4分の1から3分の1程度しかありません。このことは肩関節が大きな可動域を持つという利点とともに、不安定性も大きくなってしまう不利な点にもなります。
関節窩の辺縁に付着する関節唇(かんせつしん)という軟骨が、接触面積を広げたり陥凹を深くしたりすることで肩関節の安定性を大きくする役割を果たしています。関節唇は前上方、後上方、前下方、後下方に分けられ、上腕二頭筋腱と関節上腕靭帯がつながっている関節唇上部をSLAP(スラップ=Superior Labrum from Anterior to Posteriorの頭文字)と呼びます。この部位に引っ張られる力やひねられる力などが作用することで、関節唇が傷ついたり、裂けてしまったりすることをSLAP損傷といいます。
原因と病態
野球での投球、バレーボールでのスパイク、テニスでのサーブやスマッシュといった、手を頭上へ上げるオーバーヘッド動作を繰り返すことで発症することが多いです。
症状
手を挙げた時の痛み
引っかかり感
夜間痛や動作時痛
肩の不安定感、肩が抜ける感じ
可動域制限
筋力低下
検査・診断
問診・徒手検査
受傷時の状況、受傷後の症状や経過、肩の脱臼を繰り替えるかなどのエピソードを確認。医師が徒手的検査を実施するが、より精密な検査が必要となる。
MRI、CT
これらの画像検査で診断は可能な場合が多いですが、上方関節唇断裂の診断はなかなか難しく、最終的には肩に内視鏡を入れて初めて診断される場合も少なくありません。
治療
発症してすぐは炎症と痛みが強いため、安静(オーバーヘッド動作の禁止)、薬物療法、などを行ないます。
炎症が落ち着いてきたら理学療法を行ないます。損傷部位に負担をかけないように、上肢のみならず体幹、下肢の可動域改善、筋ストレッチ、筋力強化も行ないます。野球などのスポーツが原因となる場合は各動作のフォームを確認し、損傷部位へ負担がかかっていると考えられる場合にはその矯正も必要になります。
正確な診断のもとに、しっかりとした理学療法を行なえば、保存療法で症状が軽快する場合が多いです。しかし、3~6カ月たっても改善がみられない場合には手術療法が必要となります。
熊本市東区御領の整形外科クリニックです。お子様の成長やスポーツに関する悩み、働く世代の方々の痛みやしびれ、高齢の方々の歩行や動作の不安や障害など骨、関節、筋肉に関する問題など、ご相談ください。
診療内容:整形外科・スポーツ整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科