親指から薬指がしびれる!?つまんだりする動作が難しい!!?
手根管症候群
手根管(しゅこんかん)症候群とは、手の運動や指先の感覚に重要な役割をする正中神経が障害される結果、しびれや痛みなどの症状をきたす病気です。手首には「手根管」と呼ばれるトンネル状の形態があり、そのトンネル内に正中神経や腱などが通っています。
なにかしらの原因で正中神経が圧迫されると、それによって症状が誘発されます。この病気では手首の安静が治療方法の一環であり、生活スタイルを変える必要がありますが、ときには手術による治療も選択される病気です。
原因と病態
手根管症候群は正中神経が圧迫されることで、手のひらの感覚や指の運動が障害されます。手のひらの付け根には、手首の骨と靭帯に囲まれた手根管というトンネルがあり、このなかを複数の腱や正中神経などが通っています。この正中神経は親指から薬指の親指側にかけての感覚や、親指の動きなどを司る神経です。
神経が圧迫される原因には、手首の曲げ伸ばしを繰り返し、手首に負担のかかるような動作や仕事が多いことで、手根管のなかを通る腱をおおう膜などが炎症を起こし腫れることがあります。
また関節リウマチなどの炎症性疾患では、炎症で腫れた滑膜により正中神経が圧迫されます。正中神経そのものが障害を受けることで手根管症候群を発症することがあります。原因として代表的なものは糖尿病です。その他、妊娠や甲状腺疾患なども原因であると考えられます。
症状
小指以外の指先にジンジンするようなしびれを感じ、特に中指の先によくしびれが現れます。就寝中、手根管の内側で腱の膜にむくみが生じて、明け方に痛みが発生することが特徴です。
正中神経は筋肉を動かす命令も出しているため、症状が進行すると、物を掴んだりつまんだりする対立動作が困難になります。、お箸やペンを握るなどの対立運動が難しくなります。対立運動は親指とその他の指先を合わせる動作で、動作としては小さな運動ですが、ボタンをかける、お札を掴む、お箸やペンを握るなど日常動作でなくてはならない動作が障害を受け、日常生活における大きな障害となります。
検査・診断
ティネルサイン(Tinel’s Sign)
ティネルサインは手首の手のひら側を叩くとしびれ、痛みが指先に響くと、この病気が疑われます。
ファーレンテスト(Phalens Test)
ファーレンテストでは、身体の前で両手の甲を合わせて1分間その状態を保ちます。その間にしびれを感じたり、そのしびれ感が強くなる場合に手根管症候群が疑われます。
神経伝導検査
神経伝導検査では、手根管症候群で障害を受ける正中神経の分布領域に一致して、神経の伝導速度が遅くなっていることを確認します。
画像検査
画像検査として、手根部位のMRIやエコーが撮影されることもあります。画像検査を行うことで手根管症候群と同様の症状をきたすその他の病気(たとえばガングリオン)を見極めるメリットもあり、治療方法の決定のために重要な検査です。
治療
治療は、保存的な治療と手術に分けることができます。
保存療法
生活指導
手首に対する運動負荷が原因であることが多いため、基本的には手首を極力動かさないようにすることが大事です。自転車のハンドルを握るような、手首を返す(手の甲の側に反る)姿勢を長時間続けると神経が圧迫されるため、手根管症候群を悪化させるような動作を避けることも大切です。
ストレッチ
手根管が狭くなっていると、手根管内を通る神経や腱が圧迫されています。そのため腱の滑走が悪くなり、手首や指の関節が硬くなります。そのため痛みのない範囲で筋腱を伸ばすストレッチを行い、関節の拘縮(関節が硬くなること)を予防します。
薬物療法
神経の炎症を抑えるビタミン剤の投与や場合によっては、手根管の中に直接ステロイド薬を注射する治療法です。
手術療法
再発を繰り返す場合、あるいは症状が続き進行している場合には手術も検討します。手根管症候群の手術は、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術や、小さく切開して行なう直視下手根管開放術があります。
http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/1shukon_3.pdf
※日本手外科学会「手外科シリーズ1」から画像を引用しております。
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