転倒して肘を伸ばした状態で手を着いた!
上腕骨顆上骨折
小児で最も頻度の高い骨折の一つです。5~10歳に多いとされています。小児が転倒して、肘の強い痛みを訴えたときはまずこの骨折を疑います。上腕骨とは肘から上の腕の骨で、上腕骨顆上骨折は肘に近い部分の骨折を言います。
原因と病態
ほとんどは、滑り台、鉄棒、ブランコ、跳び箱などからの転落・転倒で、肘を伸ばした状態で手をつき、肘が反って受傷します。まれに肘を曲げた状態で強打して生じる場合もあります。
症状
小児が転倒して、肘の強い痛みを訴えた場合はまずこの骨折を疑います。肘を自分で動かすことができず、肘を押したときの痛みや動かそうとしたときの痛みがあります。腫れも強く、転移のあるものは、肘頭が後方に突出して見えます。受傷から時間が経つと、肘周囲の水疱形成など循環障害が現れることがあります。骨折片で神経や血管が損傷されると、手や指がしびれて動かせなくなることがあります。
検査・診断
レントゲン撮影によって骨折の方向、転移の程度をみて診断、治療方針の決定をします。
治療
変形の程度が軽い場合にはギプスなどで固定を行い、変形が強く不安定な場合には手術療法を行います。腫れがひどい場合には牽引(腕を吊って引っ張る)治療を行うこともあります。
徒手整復法
患児を仰向けとし、全身麻酔下にX線透視を用いて整復します。整復が良好であれば、その位置で上腕から手首までギプスで固定します。術後24時間は患肢の循環状態を特に注意深く観察します。ギプス固定を4週間行ってから、次第に運動を許可します。
牽引療法
徒手整復が困難であったり、整復位が保持できず固定性の悪い場合、ま骨片の転移の強いものには牽引療法を行います。牽引による整復は2~3日以内に得られることが多いです。
経皮的鋼線固定
骨折部の安定性が悪い場合には、徒手整復後にKirschner鋼線を刺入します。
合併症
神経損傷 / 血管損傷
神経や血管が損傷されることがあり、血管損傷の場合は早急に手術が必要です。上腕動脈の血行不全、前腕の区画症候群の結果として、手指の拘縮を生じるVolkmann(フォルクマン)拘縮を生じる場合があります。
変形癒合
骨折した部分では骨は内側にねじれやすいため、変形(内反肘)が残ることがあります。
※日本手外科学会「手外科シリーズ19」から画像を引用しております。
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