指に力が入らない!?手首がいつまでも痛い!??
舟状骨骨折
舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折とは、手の関節を構成するひとつの骨である舟状骨と呼ばれる骨に骨折が生じた状態です。これはスポーツのケガのなかでも代表的な骨折のひとつとして知られています。舟状骨骨折を発症した場合、痛みを生じますが、骨のずれが大きくないため、それほど強い痛みにならない場合もあります。また、受傷後、間もなくではレントゲン写真で異常が見られないこともあり、実際には骨折していてもわからないことがあります。
しかし、適切な治療を受けずに放置すると、手の機能障害や慢性的な痛みの原因となる可能性があります。そのため、舟状骨骨折が疑われる受傷機転がある場合には、診断がはっきりしない場合でも、経過を追いながら注意深く骨折の有無を評価することが大切です。
原因と病態
舟状骨骨折はサッカーなどの競技者に多くみられるもので、10〜20歳代でよくみられる骨折です。主に競技プレー中に後ろ向きに転んで手をついたときに起こります。多くの場合、骨の中心部がひび割れて骨折を起こします。その他、交通外傷でも同様の外傷機転が生じることから舟状骨骨折が発症する場合があります。
舟状骨のなかでももっとも骨折を来たしやすい部位は、舟状骨の腰部と呼ばれるくびれた部分です。舟状骨に対しての血液供給は指先側から手首に向かってなされており、腰部の骨折によって手首側の血流不全が生じやすいです。舟状骨は血液供給が乏しいという特徴をもともと持ち合わせており、骨折の治癒も遅れがちです。
症状
舟状骨骨折は、手首を強く背屈させることから生じます。舟状骨は、ちょうど親指の付け根に存在する骨であるため、受傷直後には同部位が痛み、腫れます。しかし、骨のずれが少ない場合には痛みはさほど強くなく、捻挫として認識されることもあります。
受傷後しばらくすると症状は軽快し、一見すると治癒傾向にあるようにも感じられます。しかし、舟状骨が放置され適切に骨が元の形に戻らないような状況においては、骨が分断されたままになってしまいます。骨の分断が残ると、本来は関節ではないにもかかわらず、関節のように動くこととなってしまい、偽関節を形成します。偽関節では骨の変形が進行し、痛みや手の機能障害を引き起こします。
検査・診断
問診・徒手検査
受傷時の状況を聞き取り、この骨折を疑います。また解剖学的嗅ぎタバコ入れを圧迫すると、痛みが誘発されることからも疑われます。
レントゲン検査
舟状骨骨折が疑われる場合、レントゲン写真が撮影されます。ただし、骨折をしても早期では診断がつかないことも少なくありません。そのため、レントゲンを撮る場合は、通常の正面や横から撮影するだけではなく、斜めや特殊な角度からも撮ることが必要となります。前述したように、受傷後初期の段階で確定診断がつかない場合があります。骨折が強く疑われる状況であれば、2~3週間後に再度診察、検査を行うことで、時間の経過とともにレントゲンにはっきりと写るようになります。
MRI・CT
より早期の段階から舟状骨骨折を形態学的に捉えることが可能となるため、こうした検査が行われることもあります。
治療
腫れや痛みが軽く、レントゲン写真でも骨折と判断できないような場合でも、明らかに手をついてケガをしていたり、ピンポイントで親指側の痛みや圧痛を訴えていたりするようであれば、骨折と想定して治療を開始します。骨折部を安定させるためにギプスによる固定を行います。
偽関節になってしまうと、骨の細胞が壊死してしまうため、骨を削り、移植が必要となります。専門医でも非常に難しく大変な手術となるため、このような状態になる前に早期に発見して治療することが大切です。
※日本手外科学会「手外科シリーズ9」から画像を引用しております。
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