太もも、ふくらはぎに起こりやすい!よく耳にする肉ばなれとは!?
肉ばなれ
肉ばなれは、筋肉が断裂するけがです。太ももやふくらはぎなどの筋肉が切れたり、裂けたりすることによって、炎症や内出血を起こし、患部が腫れ、激しい痛みを感じます。部分的に断裂することが多いのですが、まれに筋肉が完全に断裂してしまうこともあります。子どもが肉離れになってしまった時は、特に早く回復させてあげることが大切です。なぜなら、痛みをがまんし続けると、子どもの身体は吸収力があるので、その痛みに反応して、全身の筋肉が硬くなって、身体がゆがんでしまうことがあるからです。
成長期には、筋肉と骨の付着部に牽引ストレス(筋肉が骨の付け根を引っ張る)がかかり、剥離骨折(はくりこっせつ)を起こすこともあります。骨の付着部が柔らかいので、筋肉の強い力で引っ張られ骨ごと引き離されてしまいます。
原因と病態
肉離れは、急なダッシュやジャンプなど、急激に筋肉への負荷がかかってしまう動作に筋肉が対応できない場合に起こります。瞬発的に筋肉に強い負荷がかかり、その負荷に筋肉が耐えられなくなった時に、筋肉の一部が切れたり、裂けてしまったりするのです。スポーツをしている時に限らず、筋肉が疲れていたり、弱っていたりすると、ちょっとした運動や日常の何気ない動作でも、肉離れになることがあります。要因としては、①筋肉の柔軟性の不足 ②拮抗筋の筋力バランス不良 ③ストレッチ不足 が挙げられます。体育の授業やクラブ活動の際に必ず準備運動をしたり、大人になってからも「普段からストレッチを心掛けましょう!」などと言われたりするのは、筋肉を柔らかい状態にしておくことで、肉離れなどのケガを防ぐためなのです。
肉離れは、年齢や筋肉の状態によって症状が異なります。新生児・乳児・幼児は、筋力が低いため肉離れは起こりませんが、筋肉の発達、成長、運動量の増加に伴い、小学校高学年くらいから肉離れを起こしやすくなります。
成長期の若い人やスポーツ選手は、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)、ハムストリングス(太もも裏側の筋肉)が肉離れになることが多く、中高年になると腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)の肉離れが多くみられます。
大腿四頭筋の肉ばなれ
大腿四頭筋の中でも大腿直筋が最も受傷しやすいのは、股関節は後ろに引いている状態で、膝が曲がっている場合です。これは、最も筋肉の張力が最も強い姿勢になります。この姿勢は、走っている際に後方に蹴りだした脚を前方に振り上げる切り返しの時や、サッカーでボールを強く蹴ろうとする際にみられます。ほかの原因としては、筋疲労、柔軟性やコンディションの低下及び不適切なウォーミングアップなどが挙げられます。大腿四頭筋の肉ばなれは、疾走、ジャンプの着地、ラグビーなどのコンタクトスポーツにも多く見られます。
ハムストリングスの肉ばなれ
ハムストリングスは太ももの裏の筋肉で、普段は膝を曲げる際に一番使う筋肉です。肉ばなれの原因を理解するうえで重要なのは、動作の際に起こる遠心性収縮です。筋肉が縮みながらの収縮である求心性収縮に対し、遠心性収縮は筋肉が縮もうとしながら、それでも伸ばされる状態です。最も典型的な肉ばなれの発生例は、走っている際に起こるハムストリングスの肉ばなれです。膝を伸ばす筋肉である大腿四頭筋の働きでおもいっきり振り出された足に対して、足を接地する動作に切り替わる際のブレーキ動作としてハムストリングスを収縮させたときに発生します。つまり、ハムストリングスは収縮しようとしているのにもかかわらず、前に振り出された動作のために伸ばされるというわけです。そのため、ハムストリングスの肉ばなれは、短距離走、サッカー、ラグビー、テニス、野球などで生じやすいと言われています。
腓腹筋の肉ばなれ
特に内側に多く、受傷時筋肉の断裂感を訴えることがほとんどです。腫れや押したときの痛みが明らかで、ストレッチした際の痛みがあります。ふくらはぎの肉離れは「テニスレッグ」とも呼ばれ、テニスをすると頻繁に起こりやすいけがとしても知られています。ボールに素早く反応して瞬発的に動いた際に、収縮していた筋肉が急激に伸び縮みして、筋肉の繊維が裂けてしまったりするのです。
症状
押したときの痛みが強く、腫れは比較的軽度であることが多いです。内出血を起こすこともあります。また、痛めた筋肉に抵抗を与えて収縮させたときの痛みと、ストレッチした際の痛み、動きの制限が特徴的です。
検査・診断
病院では、エコー(超音波検査)、CT(コンピュータ断層撮影)、レントゲンなどの画像検査などによって、鑑別診断(症状を引き起こす疾患を絞り込むために行う診断)を行います。肉離れなのか、剥離骨折なのか、また同じ肉離れでも重傷なのか、軽傷なのかといった判断をしてから、症状に合わせた処置をしていきます。肉ばなれは次のように区分されます。
1度(軽症) わずかな筋繊維の損傷
2度(中等症) 1度より大きい部分断裂
3度(重症) 完全断裂
治療
1度(軽症) わずかな筋繊維の損傷の治療
1度の肉ばなれは歩行が可能な場合がほとんどです。下記の応急処置を行い、ストレッチの際の痛みや患部を押したときの痛み、筋収縮の際の痛みを指標に保存療法で治癒します。競技復帰まで1~2週間程度です。
2度(中等症) 1度より大きい部分断裂の治療
肉離れの治療は、安静と固定が基本となります。肉離れというのは「本来ひとつにまとまっていた筋繊維が無理な力がかかったせいで部分断裂した状態」です。つまり、基本的には切り傷や裂傷と同じです。切り傷が出来た場合は、そのまま放置しておくよりも、切れた箇所の皮膚を寄せ合い、固定しておく方が早くくっ付いて治癒していきます。肉離れによって壊れた筋肉の繊維も、固定することで修復します。そのため2〜3週間は患部を固定し、組織の修復を推進するのですが、組織は修復過程で収縮してしまうので、元の組織の状態に戻すには、収縮した組織を引き延ばすことも必要になります。痛みを指標にしながら、ストレッチや筋力トレーニングを行います。競技復帰には4~6週間を要します。
3度(重症) 完全断裂
比較的まれではありますが、完全断裂した肉ばなれは手術を要することが多いです。縫合や再接着といった手術療法を行います。
リハビリテーション
血行を良くすることによって損傷部位を再生するために、裂けてしまった患部に栄養を届ける姿勢・関節の動かし方・歩き方の指導などを行い、早期回復を促していきます。再び肉離れを起こさない筋肉の使い方、筋力のアンバランスさの解消、さらには十分な柔軟性を獲得するための指導も受傷後早期からアプローチしています。
肉ばなれになったときの応急処置
では、肉離れになってしまった時には、どのような応急処置をしたらいいのでしょうか。病院に行くまでに大切なのは、次の3つの行動です。
(1)すぐに冷やす。ただし、冷やしすぎない
肉離れを起こした直後は、歩行を控え、直ちに冷やすことが大切です。水に濡れたタオルでいいので、すぐにアイシングしましょう。ただし、冷やしすぎないことが大事です。アイシングには内出血の拡大を防ぐ効果がありますが、冷やしすぎると筋肉が固くなり、回復に必要な血行を悪くしてしまいます。冷やしすぎて痛くないことを目安として、長くても30分程度にしてください。
(2)膝を軽く曲げ、足を上げる
病院に行くまでは、膝を軽く曲げ、ソファやクッションなどを使って、下肢挙上(足を高く持ち上げた姿勢)にしておくと、痛みが和らぐことが多いです。患部を心臓よりも高い位置に上げておくと、肉離れの膨張(腫れ)を防止したり、軽減させる効果があるのです。こうした姿勢で待機し、移動の準備が整い次第、できるだけ早く病院に向かいましょう。
(3)移動時は、患側に体重をかけない
肉離れになってしまったら、患側(けがをした側)に体重をかけないことがとても重要です。移動する際は、誰かに肩を貸してもらったり、おぶったりしてもらえると理想的です。それができない場合は、ケンケンでも構いません。病院に向かう時は、くれぐれも患側に体重を乗せないように気をつけて移動しましょう。
熊本市東区御領の整形外科クリニックです。お子様の成長やスポーツに関する悩み、働く世代の方々の痛みやしびれ、高齢の方々の歩行や動作の不安や障害など骨、関節、筋肉に関する問題など、ご相談ください。
診療内容:整形外科・スポーツ整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科